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電総研ニュース(1996年) |
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563号(1996年12月)
562号(1996年11月)
561号(1996年10月)
560号(1996年9月)
559号(1996年8月)
558号(1996年7月)
557号(1996年6月)
556号(1996年5月)
555号(1996年4月)
554号(1996年3月)
553号(1996年2月)
552号(1996年1月)
静電容量、すなわちキャパシタンス標準は数ある電気標準量(例えば、電圧標準、抵抗標準など)の中でも最も重要なものの一つである。現在のキャパシタンス標準は、量子ホール抵抗と呼ばれる量子現象を利用した基準抵抗を起点として決定することが国際的に取り決められている。量子ホール抵抗 (h/e2)/i (i=2 または 4) を基準として、いくつかの段階を経てまず100kΩの抵抗器に値が付けられる。この100kΩ値は直角相ブリッジと呼ばれる測定装置を介して1nFのキャパシターに値が渡され、さらにキャパシタンスブリッジによって100pF、10pFと順次値付けされる。キャパシタンス標準とはこのような量子抵抗から始まる一連の測定システムである。この測定システムを完成させるには、直角相ブリッジなどいくつかのブリッジ回路が必要であるが、これらにはすべてに共通して誘導分圧器が重要な部分を占めている。今回、これらのブリッジ回路に用いる10:1誘導分圧器を高精度に実現することができた。製作した誘導分圧器の分圧比を詳細に測定したところ10:1からの比のずれは、同相成分で-(1.37±0.05)×10-7、直角相成分で-(7.22±0.12)×10-7であった。この結果は、今回製作した分圧器を使用すれば10-9台の精度でのキャパシタンス測定が可能となることを示している。
量子細線、量子箱などの低次元半導体量子ナノ構造を利用した新しい量子デバイスを 実現するためには、原子層オーダでサイズの揃った量子ナノ構造を十分な密度で作製しなければならない。このような高精度な量子ナノ構造はこれまでの技術によって実現不可能とされていた。我々は、最近、流量変調結晶成長法を用いた量子細線の作製において、量子細線の成長はある原料供給量範囲に入ると自然に停止する現象を発見した。この新しい自己停止成長を利用することにより、原子層オーダで均一な量子ナノ構造の作製が初めて可能となり、量子ナノ構造デバイスの実現に大きく前進した。
エネルギー部 高野清南
ニューサンシャイン計画「分散型電池電力貯蔵技術開発」の一環として,開発中の大容量リチウム二次電池の安全性や信頼性の評価に資するために,リチウム二次電池の電気的挙動や熱的挙動を実験とシミュレーションにより研究している。この研究を通して最近得られた,リチウムイオン電池の充放電における履歴現象や発熱挙動および外部短絡時の電気的熱的挙動に関する新しい知見を紹介すると共に,充放電時の熱挙動のシミュレーションについて紹介する。特に,電池の熱挙動解析で最も重要な充放電における発熱因子を明らかにすると共に,履歴現象がその発熱因子に関係することなどを明らかにした。
情報科学部 脳機能研究室 北澤 茂
プリズムで光を屈折させて目標の見かけの位置をずらすと、はじめは見かけの位置に手を伸ばしてしまい、目標に触ることができない。しかし、何回か運動を繰り返すと正確に手を伸ばすことができるように再学習が起こる。われわれは運動の直後に運動の結果(手と目標の位置)を見せた場合と、運動後しばらくしてから見せた場合の再学習の速さを比較した。その結果、運動結果を見せるタイミングをわずか1/20秒遅くするだけで、再学習の速さが4割減少することを見い出した。ゴルフで打球の行方を見てからスイングの間違いに気付くようでは上達はおぼつかない。打った瞬間の間違いを、打ったその瞬間に見ることが上達の秘訣である。われわれの研究結果についてはこんな解釈も可能である。
ビスマス系銅酸化物超電導体の磁束格子融解と超電導次元性の観測
電子基礎部電子物性研究室 山口祐二
酸化物高温超電導体の研究では、従来の金属超電導体では意識されていなかった重要な概念が明らかにされつつあり、そのひとつが「磁束格子融解」であり、もうひとつは超電導の強さが特定の結晶面方向に片寄っているという異方性あるいは「2次元性」である。前者は外部磁場のもとで電気抵抗ゼロという真の超電導領域を狭める効果をもたらし、後者はその効果に磁界方向での制限を加えている。いずれも酸化物超電導体の特性を理解し制御する上で重要な新しい概念であり、酸化物超電導技術を切り開く指針となるものである。当所では、今回 この確認に必要なビスマス2212(Bi2Sr2CaCu2Oy)の良質な単結晶を育成することに成功し、これらの現象を明諒に観測することに成功した。
数個から数千個程度の分子の会合によって生じるナノメートルオーダーの粒子を含むナノパーティクル系は、人工的に得られる超分子の一種と考えられ、単一分散された分子や結晶では見られない非常に興味深い物性を示すことがわかってきた。この超分子化合物を用いて無機化合物では実現不可能な機能を発現し得る材料を開発することを目標として、有機分子を溶液状態から直接固体化するという全く新しい物質創成法を見出し、更にこれを用いた新しい機能性素子の実現を可能とする薄膜形成法および装置を開発した。作製された薄膜を偏光顕微鏡および位相差顕微鏡観察した結果、結晶化している部分もなく屈折率分布も少ない極めて良質の薄膜が得られ、有機材料を用いる機能性光薄膜素子実現への大きな足がかりを得た。
極限技術部宇宙技術研究室 岩田敏彰,村上 寛
総務部研究設備管理課 樹神謙三,沼尻文雄,鈴木俊幸
宇宙ロボットは無重力環境で浮いた状態になり,ロボットが腕を動かすとその反作用で胴体も動いてしまう。腕の形と胴体の方向を同時に制御するのにもっとも効率的な方法はロボットの腕の運動だけを上手に利用することである。この制御法として,離散的な腕の運動とその反作用による胴体の運動をデータベースとして使う動作計画法を提案した。その実証のため,北海道上砂川町にある(株)地下無重力実験センターの落下施設で宇宙ロボットの運動実験を行った。これまで3次元の無重力空間でロボットの運動実験を実施した例はない。この実験から実際に宇宙ロボットの腕の形と胴体の方向を同時に制御できることが確認できた。
超電導発電機の実現には,高度な信頼性を有する界磁巻線の安定性に関する設計基準を確立する必要がある。そこで,多種類の導体の試験が可能となる竪型回転試験装置を開発した。高速回転状態における試験を行い,安定性に関するデータを体系的に取得できた。これらの成果は超電導発電機の実現に重要な役割を担うだろう。
中性ラジカルが主な膜生成反応種と考えられているシランガスプラズマから作製されるアモルファスシリコン薄膜堆積過程に、イオン種の運動エネルギーによるアモルファスネットワーク構造引き締め効果を導入した結果、作製された水素化アモルファスシリコン薄膜のキャリア(電子、正孔)移動度を大幅に改善することに成功した。イオンエネルギー分布の制御には、三電極構造を用いた。高周波電極とメッシュ電極間の主プラズマを円筒で閉じ込め、メッシュ電極を接地することで、メッシュ電極下の基板に接する副プラズマの電子温度を0.1 eV まで低下させることが可能となり、基板に印加する直流電圧によって膜成長表面に入射するイオンのエネルギーを精密に制御できた結果である。
材料科学部材料制御研究室 城 昌利
X線光電子スペクトルに見られる連続的な非弾性散乱バックグラウンドは、多重散乱の結果であるため、これまで満足のゆく取り扱いが難しかった。今回、この部分を解析し、固体内部の散乱機構、原子濃度、光電子励起機構など、多様な情報が同時に得られる方法を開発した。
情報アーキテクチャ部計算機方式研究室 児玉祐悦,坂根広史,山口喜教
科学技術分野のみならず、社会科学分野においても計算機の重要性は大きくなっており、処理速度の向上が求められています。このため、多数のプロセッサを協調動作させる並列処理技術が不可欠となっていますが、従来の並列計算機では、台数を増加させた場合の性能があまり向上しない場合があり、並列処理の適用例は限られたものになっていました。これはプロセッサ間のデータ受け渡しに多くの時間が必要なためでした。 電総研ではこのような問題を解決する並列計算機EM-Xを開発しました。EM-Xでは通信を1ワード単位の小さなメッセージに区切ることにより、計算と通信を非常に効率良く融合することができ、柔軟な並列処理を実現できます。また、マルチスレッド技術を用いて通信遅延を他の処理に有効利用できる他、分散共有メモリもサポートしています。 これらの技術をより高速で多数のプロセッサに適用することにより、並列処理の適用分野を大幅に拡大できる次世代超並列計算機への道を切り開くことが可能です。
ダーティープロセスとも言われるプラズマプロセスにより作製される水素化アモルファスシリコン膜には不純物が混入しやすく、その低減は困難であった。今回、様々な工夫によりこれらの不純物レベルを桁違いに下げることに成功した。この膜の光劣化特性を調べることにより、光劣化は不純物によるのではなく、シリコンと水素からなるランダムなネットワークに起因することを明らかにした。
MOSFET構造の高安定真空マイクロ素子:実用化へ大きく前進
電子デバイス部プロセス基礎研究室 伊藤順司,金丸正剛,田上尚男,清水啓三
MOSFET構造の新しい真空マイクロ素子の開発に世界で初めて成功した。本素子は、MOSFETのドレイン電極部に先端の鋭いエミッタを形成したもので、エミッタから真空に放射される電流量が高精度に制御されるため、従来から問題となっていた電流の不安定性や素子破壊が根本的に解決する。製造プロセスもきわめて簡単で、オールシリコンプロセス化が可能であるため、実用性が高い。
情報科学部認知科学研究室 山本吉伸
ヒューマンコミュニケーション支援技術に関する研究グループでは「Zモニタ」と呼ばれる新しいインタフェースデバイスを開発しました。Zモニタは、透明 液晶ディスプレイを2段のアームで支える構造で、手でスクリーンを3次元的に動かすことができます。ここでは「電子ルーペ」「遠隔会話環境」「医療用ビュー ア」の三つの例を紹介します。
連続発信出力800mWのAlGaInP半導体レーザーを励起源とするCr:LiSAFレーザーのカーレンズモード同期により、パルス幅26fsed,スペクトル幅34nmのフェムト秒レーザーパルス発生に成功した。同技術開発により、信頼性の高い小型高性能な完全固体化フェムト秒レーザーを実現した。
エネルギー部エネルギー情報技術研究室 津田 泉
化学独立栄養細菌は無機物の酸化エネルギーで二酸化炭素を固定化する細菌で,太陽電池出力での細菌の消費した無機物の還元による代替光合成反応の可能性を検討している。増殖の際の無機物と菌体密度の相関を測定し,システムの可能性を示した。
超分子部分子機能研究室 清水秀明,眞島利和,山田雅弘
極限技術部高密度エネルギー研究室 富江敏尚,三浦永祐
電子デバイス部プロセス基礎研究室 金山敏彦
総務部研究品試作課 樹神謙三,鈴木俊幸
研究室規模の超小型密着型X線顕微鏡の開発に成功した.X線照射直前まで光学顕微鏡でのモニターが可能であり、運動するなど生きている生物試料の微細構造を高分解能で観察することができる.放射光施設あるいは巨大レーザ施設がなくてもX線像が得られ,生物学的に有用なデータの蓄積が加速されると期待している。
情報アーキテクチャ部分散システム研究室 平野 聡
インターネット上の多数のコンピュータによる分散処理を容易に記述できる言語HORBを開発した。HORBはJava互換で高い可搬性と相互運用性を実現している。
極限技術部宇宙技術研究室 町田和雄
宇宙で機器・部品を扱うロボットには精確かつ柔軟な作業能力が必要となる。指と手首の機構により精密作業性を与え、多重センサでの融合制御とテレセンシングにより無人施設の曖昧な環境でも確実な作業を行える精密テレロボットの研究を進め、1997年度に打ち上げ予定のETS-VIIでの世界初の精密作業実験に適用できる見通しを得た。
INSECT(INternet SECure Transferrer)システムの開発
情報アーキテクチャ部情報ベース研究室 瀬河浩司
現在開発中のINSECT(INternet SECure Transferrer)は、安全にかつ適度のセキュリティを保ってデータをやりとりすることによって、高い信頼性を持つネットワークを構築するシステムである。このシステムは、6種のプログラムから構成され、それらが恰も蟻や蜂のように相互に連携しあって機能する。
SOI型薄膜結晶シリコン太陽電池の作製
−電界効果パッシベーション−
SOI(silicon-on-insulator)基板を用いて薄膜結晶太陽電池(厚さ5〜100μm)を試作した。そして、バイアス電圧の制御による表面パッシベーション(電界効果パッシベーション)が薄膜結晶系太陽電池の高効率化に有効であることを実証した。
基礎計測部音波技術研究室 佐藤宗純
海洋の植物プランクトンの鉛直分布を長期定置観測するため、ブイ搭載用小型海中レーザレーダを開発した。CWレーザと冷却CCDカメラを用いたバイスタティックレーザレーダ方式により、従来の大型システムと同程度の測定感度が得られた。さらに、海水のラマン散乱光とクロロフィル蛍光の強度分布を同時に測定し、プランクトン濃度の測定精度の向上を図った。
サンゴ礁による二酸化炭素吸収メカニズムを解明するために、試作した密閉型水槽を用いてサンゴによる炭素固定速度を測定した。また、海水と大気の炭酸系の測定誤差を解析して、最適測定システムを検討した。
電子デバイス部プロセス基礎研究室 金丸正剛,田上尚男,伊藤順司
イオン注入方を用いて、シリコン電界放射エミッタの内部にnp接合を作りつけ、そのエミッション電流がゲート電圧増加に対して飽和傾向を示すことを明らかにした。この特性が、電流変動の抑制に効果的であることと、このエミッタが光応答性を有することを実験的に示し、光デバイスとしての応用可能性を示した。
材料科学部材料制御研究室 清水貴思,大串秀世
新しい金属/酸化物半導体界面の電子状態制御手法を開発した。超高真空装置内で高純度オゾンを用いた酸化物表面処理を行ない、その後in-situで金属堆積を行なう手法により、理想的な酸化物ショットキーダイオード特性を得ることに成功した。
薄膜材料の表面構造解析のための、低エネルギー(数十keV)の水素イオンを用いた飛行時間型のイオン散乱分光装置を開発した。これは従来の高エネルギー(MeV)のヘリウムイオンを半導体検出器を用いて測定する装置に比べて測定精度に優れ、かつずっと小型の実用的な装置である。
サッカーサーバ
−マルチエージェントシステムの共通問題を目指して−
協調アーキテクチャ計画室 野田五十樹
マルチエージェントシステム(MAS)を総合的に評価するためのソフトウェア、サッカーサーバを開発した。このサッカーサーバを用いれば、ネットワークを通じて異なるMASで記述されたチーム同士を対戦させ、そのMASの持つ協調性、リアルタイム性などの能力が総合的に評価できる。
実験データが希少な極低温クリープの特性解明への有力なツールとして期待できる、金属材料の引張りクリープ測定装置を開発した。信頼性と再現性に優れた光干渉式微小変位測定法を、液体ヘリウム温度(零下269度)下に応用した結果、100時間以上の長時間の伸び速度を、材料長さで規格化した量で、5×10-12/秒まで測定できる。
チタン酸ストロンチウム(110)還元表面の微視的構造と電子構造の変化を光電子分光および走査型トンネル顕微鏡により測定した。加熱温度によって2種類の導電的電子状態を表面上で観測した。遷移金属化合物表面上に金属的電子状態を生じた今回の結果は、d電子系表面を利用したエレクトロニクスの可能性を示唆する。
知能情報部画像研究室 増田健
異なる視点から観測された複数の3次元形状計測結果を位置合わせするための、頑健な手法をロバスト推定の考え方に基づいて開発した。これによって、一度では全体を観測できない3次元形状測定装置の情報を統合し、対象物の全体の形状をモデル化することが可能となった。
結合量子細線構造の作製と結合効果の観測に成功
(フェムト秒領域で動作可能な光・電子融合素子の実現を目指して)
光技術部光電波システム研究室 小森和弘
フェムト秒領域で動作が可能な光・電子融合素子の実現を目指した新しい半導体量子素子の作製について報告している。新しく開発した流量変調MOCVD法を用いて超高速光・電子素子の基本構造である結合量子細線の作製に成功した。また、超高速動作の為に必要不可欠である1次元量子効果と結合効果をはじめて観測した。
微小領域X線光電子分光法の開発に着手
レーザープラズマX線源を用いたコンパクトなμ-XPS
極限技術部高密度エネルギー研究室 富江敏尚
超分子部分子機能研究室 清水秀明
レーザープラズマをX線源する飛行時間型の光電子分光(XPS)の実験を行い、高分解能の光電子スペクトルが得られ、プラズマの輝度から期待されたものと同程度の数の光電子が検出された。アンジュレーター放射光を用いる場合と同程度以上の計測速度のコンパクトなマイクロXPSシステムが実現できる見通しである。
当所光放射研究室では、真空紫外光を用いて、ゾル―ゲル法で作成した多孔質アモルファスSiO2膜を室温で脱水、無孔化させることに成功した。ゾルゲル法は、脱水、燒結、無孔化のための高温熱処理工程を伴うため、膜の剥離や割れを引き起こしたり、また熱に弱い基板上へのコーティングを不可能としていた。本手法によりプラスティック基板上へアモルファスSiO2膜を形成することが可能となり、新たな利用法が生まれた。
SiO2/poly-Si無機レジストによる単一電子素子基本構造の作製に成功
電子デバイス部マイクロビーム研究室 和田敏美
室温で動作する単一電子素子を作製するためには、ナノメータ寸法の宙吊り型マスク構造が要求される。有機物系電子線レジストの解像度限界を越えるSiO2 /poly-Si系の無機物二層構造型電子線用レジストを提案し、ナノ構造作製プロセスを開発した。無機レジスト・プロセスにより二方向蒸着用宙吊り型マスクを作製し、アルミニウム斜蒸着・酸化法を用いてMIM型トンネル接合列を試作した。本プロセスによって、接合面積が(6nm)2 以下のトンネル接合列が得られ、アルミニウム系では従来よりもはるかに高い12 Kでクーロン閉塞現象を観測することができた。